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親愛なるご主人さま
第22章 朝のテレビニュース

「『自由』という選択肢の一つとしてそれもアリです」
細井が付け加えた。
「それって・・奴隷として!?・・・」
返答した菜穂子の語尾に昨日までの菜穂子にはない剣があった。
寄り添って菜穂子の肩に左手を置いていた玲子が、右手で菜穂子の髪を撫で、なだめるように抱きしめた。
その玲子の手をさっと振り払い、菜穂子がその場にすくっと立ち上がった。そして自らの手で赤い犬の首輪をちぎるように外して床に落とし、細井と圭吾に言い放った。
「ここに居る意味がありません」
白くたおやかで可憐な菜穂子の裸体に変わりはないが、今の凛とした立ち姿からは見る者に嗜虐感を煽る儚さが失せ、マゾ牝特有のフェロモンも消えていた。
圭吾の目に全裸で立ち上がり意思表示する菜穂子と、ドレス姿で床に座り呆然とした表情で、取りすがるように菜穂子を見上げる玲子が映った。
それは従属と支配が瞬時に入れ替わった絵図を見るようであり、圭吾は少なからずたじろいだ。
「細井さん、私の服とお金を返してください」
「わ、わかった。持ってきているよ」
この調教の館に来る前に菜穂子は東京のアパートを引き払い、衣服や預金通帳などは”X社”が預かっていた。
トゥルルルル!!!
その時、突然電話が鳴った。
別室で圭吾の執事の老人が受話器を取った。君江の夫でこの屋敷に住み込んでいる房之助だ。子機を持ってリビングルームに恐る恐る入ってきた。

