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親愛なるご主人さま
第22章 朝のテレビニュース

菜穂子が扉を開けると、アルーデコ調の家具が置かれた豪華なリビングルームのソファーに圭吾、玲子、細井が腰を下ろして待っていた。
菜穂子はこの屋敷に来てから毎朝行われている圭吾と玲子へのご挨拶の時と同様、全裸に首輪だけを着けた姿で床にひれ伏した。
いつもなら早朝の冷えた空気に包まれながら始まるご挨拶儀式が、今日は自室で待機するよう召使の君江から伝えられ、待つこと2時間、東の窓から差込む陽がかなり高くなってから呼ばれた。暖房が入った豪華な部屋。さなり”X社”の細井が同席していることで菜穂子はいつもと違うタダならぬ雰囲気を既に察した。
「K様、玲子奥様、細井様、おはようございます」
ご挨拶してゆっくりと顔を上げる。玲子と目が合う。明らかに調教師として自分を見るいつもの刺すような眼差しとは違っていた。初めて見る玲子の辛そうな目だ。圭吾の眼差しも同様だった。
菜穂子は細井の顔を見上げた。銀縁の眼鏡の奥からの鋭い眼光は昨夜のそれと変わらぬようであったが何か意を決したように眉間に深く皺を寄せていた。
(何かある・・・)
皮肉なことに8ヶ月に及ぶマゾ奴隷調教は、菜穂子の性感や五感のみならず第六感を鋭く研ぎ澄まさせ、主人や調教師や自分に接する人の心情の変化をいち早く察することに役立った。
しかし、圭吾と玲子もまた今朝の菜穂子から醸し出される“妙な空気感”とでも言うのか、昨日までとは違う何かが変わった菜穂子を感じていた。
「菜穂子。大事な話がある」
圭吾が切り出した。
「はい」
顔を上げた上目使いの菜穂子の澄んだ瞳を見ると圭吾は次の言葉に窮した。

