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もうLOVEっ!ハニー!
第22章 三角の終焉

 小脇からの報告を口に出して読み、目を閉じて復唱し、大きく肺の空気を吐き出す。
 湊くんか。
 ルカはスマホをおいて机上で腕組みをする。
 あの二人のセット売りが軌道に乗れば強固な位置を確立するだろう。
「よかった……」
 ふと目頭が熱くなる。
 誰かをこの道に招いたのは人生初のことだった。
 綺麗で煌びやかだけじゃない底なし沼に、導いてしまった。
 もしかしたら近い未来に恨まれるかもしれない。
 床についた踵が小刻みに震える。太腿に振動が伝わって思考に影を落とす。
 世間に露出するということは大勢の憧れとヘイトを抱いて生きていくということだ。顔も名前も知らない無責任な他人から言葉を絶えず浴びせられる。
 どれほどSNSに疎くともそれらのナイフは心臓まで届く。
 スポーツの世界の厳しさとはまた色の違う地獄。
 すべてを雑音だと耳を閉じて目の前の仕事に集中する。
 それが出来る人だろう、あの人は。
 チャイムが鳴り、思考が切断されてしまう。
 亜季だ。

 入学した時に顔を見た瞬間から惹かれてきた。
 顔面を一ミリも隠してなるものかと凛としたベリーショート。バレー部に並んでも違和感のない長身に、無駄のない筋肉質なシルエット。
 冷たい瞳と突き放す低い声が、たまにくしゃりと笑って崩れるのが愛しくて仕方なかった。自分だけに向けられて欲しいと何度も願った。
 扉が開いた瞬間から亜季は玉砕の一戦だと確信していた。
 この美しい女性の瞳に自分の居場所なんてどこにもない。
 奈己とのトリオは互いの都合のよさでぎりぎり保っていたのだから。
 わからないほど馬鹿じゃない。
 諦められるほど賢くもない。
「時間もらってごめんね、ルカ」
「いいえ、どうぞ」
 傷ひとつない指先が招き入れ、玄関で足を止めて乾いた口を開く。
「ガク先輩、どうだった?」
 なんて震えた情けない声だ。
 身長より高い鏡に半身をもたれて、ルカは静かにほほ笑んだ。
「順調そのもの。きっとこの世界に似合うよ。でもそんなことを話しに来たんじゃないでしょ、亜季」
 あまりに普段通りの声色に、自分だけが緊張で爆発しそうなのだと自覚する。
 生まれてこのかた十七年、まともに女性に告白したことなんてない。
 よぎるのは奈己の顔だ。
 あんなに何度も、どこから勇気を出したのか。
 爪が手のひらに触れて、握りこぶしに力がこもる。
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