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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章  〝岬〟 


「な、なに……?」

「大丈夫。アイマスクで、目隠しをしただけだから」

 驚きを隠せない、わたしの耳元で均くんがささやく。柔らかな声の響きが、右の耳の穴を通じると、全身にぴりりとした感覚を生じさせる。

 部屋の前にきて、鍵を開けさせ、後ろを向けと言った。それに従ったわたしを後ろから抱きしめ、その視界をアイマスクで閉ざしている。

 そこまでを終えると、背後でドアの閉じる音がした。

「……」

 この部屋が二人の空間になったことを察して、胸がこれでもかと高鳴りはじめる。

「さあ、前に進んで」

 彼は既に意地悪な均くんに〝変わった〟後だ。いつもよりちょっとだけ低くて、高圧的な声がそれを物語っている。

 その独特の響きで、わたしに指示をしていた。

「そう。そのまま、ゆっくり」

 背後から両肩に置かれた手で方向を操られ、勝手しったる自分の部屋の中を目隠しのまま歩いた。

「そこで、座って」

 言われたように腰を下ろすと、おしりにふわりとした感触を得て、それがベッドであることがわかった。

「……」

 暗闇の中のわたしは、ごくりと喉を鳴らす。

 なにをされるの。なにをされてしまうの。均くんは、なにするつもりだろう。

 闇の中で、期待と不安だけが、ゆっくりと募っていた。

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