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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章 〝岬〟

◇ ◇
それから、五日後の朝のこと。
「……!」
部屋の中にいるわたしは、アパートの外から聴こえた物音に敏感に反応する。
引きこもりの自分にとって、それはいつもと同じようではあったが、今に限っては怯えているわけではない。むしろ、その逆だ。
足音が隣人のものだとわかり、ため息をつくと、スマホで時刻を確認する。もう午前の六時半だ。
「ちょっと、遅い……」
思わず呟いている。バイトは五時までのはずだから、ゆっくり歩いても六時前には着くと思っていたのに……。
【バイト後にいくから】
均くんからのそのメッセージは、昨夜にあった。
この間コンビニの前で話してからも、買い物で訪れた際に均くんとは顔を合わせている。だけど特に話せたわけではなくて、彼の対応も普通の店員としてのものだった。当然、他のお客や同僚の手前もあるから、それは仕方のないことだと思っている。
一応メッセージのやり取りも何度かあった。でも、彼からの返事は総じて事務的なものだったように思う。少なくとも、最初のころのような高揚した雰囲気は感じなかった。
変に考えすぎだろうか。だけど――
「いいのかな……本当に?」
あの時の均くんの言葉が、ふと脳裏をよぎる。
均くんの態度が急に冷ややかになった気がしたのは、あの後からだった。

