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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章 〝岬〟

「えっと……? ど、どうして急に……」
店から出てきた美里さんにそう聞かれて、均くんが困ったようにこちらを見ている。そんな彼に変わって、わたしは振り向きざまに言った。
「違います!」
その答えは当然のこと。わたしが均くんの恋人になんか、なれるはずがないから。地球が回っているのと同じレベルで、考えるまでもない事象だった。
その点に関して均くんがどう思ってるかなんて、この時のわたしに考える余裕などなかった。
「へえ、違うんだ」
美里さんという女の人は、わたしの顔を試すように眺めてから、その視線を均くんの方へ流した。
「そう、みたいです……ね」
そう口にしている均くんは、ちょっぴり元気がなさそうに見える。
そんな彼とわたしの顔をもう一度見比べ、美里さんは言った。
「フフ、なんか面白そう。二人って」
彼女はすれ違いざまに、わたしに耳打ちをする。
「でも、そんなこと言ってると、私が取っちゃうかもよ」
「……?」
「まあ、今のところは冗談だけど――じゃあ、まったねー!」
と、缶コーヒーを持った右手を上げて、彼女は夜の帳の中へ消えて行った。
もしかして彼女も、均くんのこと?
そう考えると、少しだけこの胸が騒ぐ気がした。

