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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章 〝岬〟

「なんなの? 申し開きがあるなら、ちゃんとしたほうがいいよ」
相手の女のことは名前もしらなくて、昨日たった一回、均くんのコンビニで見かけただけ。そんな女に、どうしてここまで言われなければならないのだろう。
「こ、この……だ、だ……」
綺麗に着飾って完璧にメイクもして、自分が美人だってことをわかりきっている。そんな女の不躾な追及に、激しい怒りを覚えた。
「……黙れっ!」
邪魔なマスクを外す拍子、眼鏡も道の上に落としてしまう。わたしは期せずして素顔を向けると、女に向かって怒鳴りつけた。
それに呆気に取られたような女に、更に罵詈雑言を重ねる。
「均くんに用があって、なにが悪い! お前こそ、彼のなんだっていうんだ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。私は別のバイトの男の子と知り合いなだけで、彼とはなにも……」
わたしの剣幕に、女は明らかに怯んでいる。
「じゃあ、なんで手なんか握った!」
「え……手? ああ、そんなの、たまたま流れでみたいな」
そう言って相手がいかにも余裕たっぷりの笑みを浮かべてるから、馬鹿にされたと感じてしまったって無理もないだろう。
美人で要領もよく、きっと人生のなにもかもが上手くいっている。そんな顔をしていた。
だから、恵まれた女の上から目線を受け、怒りは沸点に達したのだ。
「お前のような女がぁ――いっちばん、ムカつくんだっ!」
その叫びを最後に、一旦、通りには深夜の静寂が戻った。

