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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章  〝岬〟 


「通りかかって、たまたま目についたんだけど」

 彼女はわたしから数メートルの距離を保つ。そして、眉根をよせると道の反対側を指さして言った。

「ずっと見ていたわよね。彼のこと」

 それはコンビニの前でゴミを片付けている、均くんの背中。作業をしている彼は、まだこちらに気づく様子はなかった。

「少なくとも、私が気づいてから三分以上経ってるからね。あなた、昨日もあのコンビニにきていたでしょう? 普通に買い物をするのなら、こんな場所から窺っている理由はないはず。ねえ、本当になにをしていたの?」

 改めて彼女は明快な語り口で、最初の質問を繰り返した。

「……ッ」

「え、なぁに?」

 朝、均くんと話して以来、小声で独り言を口にした程度だから、急に言葉を発しようとすると、それが困難なことがある。咄嗟に言い返せないと、どんどん追い詰められた気分になった。

「買い物じゃなくて、彼に用があるの?」

「ぁ……うぅ」

「知り合い? それとも、まさか彼のストーカーとか?」

 怪しい格好なのは十分に承知してるけど、いきなりそんな風に言われれば胸の中でむっとした。でもその反面、言葉は思うように出てきてはくれない。

「ちっ……ちが……」

「大体、どうしてそんな格好してるわけ? 客観的に見て、他人にどう思われるか考えたことはないの?」

「うっ……くっ……」

 言葉がこんなにも上手く発せないのは、別の感情が揺さぶられたせいでもあった。

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