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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章  〝岬〟 


 午後を少し過ぎたころは、まだ寝ているのかもと、そんな風に思っただけ。でもカーテン越しに夕陽の気配を感じるころになると、胸の中には次第にモヤモヤとしたものが募っていた。

 いきなり、あんなもの(マッサージ器)を渡して感じさせてほしいだなんて、よく言えたものだとあきれる。自分の行為を今更ながらに顧みると、気分がどんよりと暗くなった。

 もし仮に彼が満足してくれたとしても、あんまりだと思うほかはない。

「あ」

 そう考えた途中で、はっとする。

 今朝の行為で性的な満足を得たのはこちらだけであって、対する均くんはどうだったのかなんてしりようもないこと。少なくともわたしと同様に、肉体的な満足感を得たはずはなかった。

 自分だけが満足を得た後で一方的に帰るように告げたのは、あまりに身勝手ではなかったか――?

 それなら今日とは反対に男の人を――均くんを感じさせるには、一体どうすればいいのだろう。具体的な手段を、まるで知識として持ち合わせていない。

 ふと不安を覚え、キーボードを叩き【男性】【性的な満足】【快感】等のキーワドで検索してみた――すると。

「『男は射精できないと、つらい』……? 『最高の快感とともに、男性を射精に導くテクニック』……?」

 わたしは検索でヒットしたあられもない文言を、口に出して読んだ。

 射精。いわゆる、男の人の〝イク〟というもの。もちろん、しらないわけはないけど、その一点に関して意識が希薄だったのは間違いない。

 彼はわたしのことを、独りよがりな女だと思ったのではないか。

 その後も、類似した項目で懸命に検索を続けていたら、いつの間にか床の上でうたた寝をしていた。すっかり暗くなった部屋で目を覚ましスマホで時間を確認すると、もう日付が変わっていることに気づく。

 均くんからの新しいメッセージは、まだなかった。

「……」

 わたしはゆっくりと立ち上がり、外出するための〝武装〟を整えはじめた。

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