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第2章 　〝岬〟　

　なぜ、自分はこんなにも淫らなのだろうか。セックスはできない、と彼に告げておきながら。過去には思いしらされてもいるのに……。

　ただ、他人を避けてきた弊害はあるのだと思う。他人と隔たりを作るほどに、徐々に内側で肥大した想い。孤独を望みながら、そんな自分と対極にある他人との繋がりを無意識の内に渇望した。人との繋がり、その究極に位置するのが、セックスということなのか。

　誰かと言葉を交わすことも顔を合わせることさえ困難な自分にとって、それは限りなくゼロに等しいもの。あきらめなければ、ならないものである。

　だけど、自分にはありえないものと考えるほど、身体はどうしようもなく疼いてしまう。そのような矛盾を抱えながら、わたしは自分を慰める術を覚えていった。

　わたしは感じながらも、過去の傷跡に苦しんでいる。

　均くんと知り合えたことで、自分の隠された欲望が頭をもたげるのは時間の問題になった。自分の中でどう折り合いをつけるべきか考えた時に、あのメッセージを受けたのである。


【エッチなことはいつさせてくれるの？】


　あまりにも好都合だった。それ故に、それが彼のイメージと重ならないことも、まったく気に留めない。わたしは素直に歓喜していた。

　だけど、わたしは既に〝岬〟と名乗った後である。それによって、この気持ちは自分でも理解し難いほど複雑なものになろうとしていた。