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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第2章  〝岬〟 


    ◇    ◇


「岬ちゃん……?」

 しばらく考え事をしていた、わたしの顔を均くんが覗き込む。当たり前のように「岬ちゃん」と呼んでくれる。

 それが嬉しいようで、寂しくもあった。

「あの……今日は、もう帰ってください」

 当然だけど、拒絶したつもりはない。

 濡らしてしまった下着が徐々にひんやりとしてきて、乱れた後の姿を恥ずかしく感じた。傍にいたら、また別のことを均くんにしてもらいたくなりそう。これ以上は自分がどうなるのかわからず、少し怖かった。

 まだ今は、彼から嫌われたくはない。

「そうだね。うん……帰るよ」

 均くんはそう言って立ち上がり、部屋を出て行こうとする。でも一度、振り返ると、俯き加減に言った。

「さっきの……本当の僕じゃ、ないから」

「……?」

「いや、なんか……自分でも、よくわからなくって……ごめん」

「どうか、謝らないでください」

「でも……」

「エッチな気分になると、誰だって少しは……わたしだって」

「岬ちゃん?」

「た、均くんは……さっきの……あんな、わたしのこと……嫌いですか?」

「き、嫌いじゃない!」

 均くんは首を左右に振ると、きっぱりとそれを否定してくれた。

 そんな彼のことを、わたしはやはり好ましく思う。

「だったら、わたしも……」

 その後の言葉は続けられなかったけど、自分でも意外なほど自然な笑みを浮かべることができたのだった。

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