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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ

「今まではお金を渡す以外、こんなことはなかったんです。コンビニには行けなくなったけど、それでも約束はしたから、とか……?」
「約束?」
「ええ……あんな風に部屋に引きこもっているのに、誰と……とは、思ってはいましたが」
おばさんは、僕の顔をまじまじと見つめた。
「ちゃんと食べて、変な気を起こさないように……それだけ、約束」
僕は岬ちゃんに言った自分言葉を、思い出していた。それを約束として守っていてくれたことに、胸の奥が熱くなった。
「あなたは、どうして彩佳と……その、お知合いに?」
改めて、おばさんに聞かれた。
「えっと……僕はここから駅の方向にいったところのコンビニでバイトしていまして、そこに岬――ああ、いえ――あ、彩佳さんが買い物にきていて、なんとなく話したりしてる内に、その……」
言葉尻がごにょごにょと、誤魔化したようになってしまう。でも、詳しくは話せないから仕方がなかった。
「では、他にもあなたのように、話すような相手がいるのかしら? だとしたら、私どもにとって、とても意外なことですが……」
「あ、いえ……いない、と思います」
僕は答えて、その後は互いに無言の時間が続いた。僕だけでなく、おばさんの方にも戸惑いがみえた。
少なくとも母親が食料を持って訪ねていたことについては、ほっと胸を撫で下ろす気分。そして、あのアパートに引きこもっていられるのは、親の援助を受けてのことのようだった。

