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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ

◆ ◆
美里さんのマンションを出ると、僕は走り出した。向かったのは、岬ちゃんのアパートだ。
あの男――加賀見永一(かがみ えいいち)のことも気になるけど、僕が名刺の住所に向かったところで、今はなにもできないだろう。それどころか下手な行動に出て、岬ちゃんとの関係を悟られる方がずっと厄介だ。
加賀見は、岬ちゃんの居場所を探している。
所属事務所の社長でありながら、過去にあんなことをして岬ちゃんを酷く傷つけた。その上、今更どういった神経で顔を合わせようとしているのか。
確かなことは、いまだに事務所の社長を名乗っていることから、法的な裁きは受けていないということだ。
こうした性犯罪の場合、被害者が泣き寝入りするケースも多いと聞く。公になることの弊害とか、警察に何度も辛いことを聞かれたりとか、裁判を戦う上での難しさとか。
きっと僕が少し考えたくらいじゃ、わからない様々な障壁が待ち受けていて、立ち向かうにしても強い覚悟が必要とされるのだろう。
たぶん岬ちゃんも、警察には届けてはいない。彼女の場合、芸能人としての知名度があるだけ、余計に難しいように思われる。そして一番の理由は、心に負った傷なのだろう。

