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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ

「あ、すいません……」
「もう、わかちゃったから、いいけど!」
「え?」
「だって、均の頭の中、そのことで一杯になってる。その上、すっかり敬語に戻ってるし、呼び方もすっかり『美里さん』だし……」
「あ!」
「もう、そういうの無意識でやられると余計にキツイからね。大体、今日は元々、二人のことで話し合う予定で――」
背けた横顔を見て、申し訳ない気持ちが募る。
「今更かもしれないけど……僕が、美里さんに魅かれてたのは事実で、なんとなくつき合ったわけじゃありません。だから岸井さんのことがあっても、譲ろうなんて考えなかった。だけど……」
「ホント、今更だよね」
「……」
次の言葉が出せずに、一頻り気まずい空気が漂ったころ。
「均って、あんなに必死な顔するんだね」
「必死な……?」
「さっきドアを開けた時、かなり険しい顔してた」
「そうですか。自分ではなんとも」
「上手く言えないけど、ああ、やっぱり男なんだなって、そう感じたんだ」
美里さんは立ち上がり、カーテンを開けて外を眺める。
「私ね、正直ほっとしたかも」
「?」
「つまり、そういう気持ちになるってことは、さ。結局、私は希を突き放せないんだって証明なんだよね」
「美里さん……」
「実は高校の時、はじめて希の気持ちを聞いた時に、そりゃあ驚いたけど嬉しい気持ちだって、ちゃんとあった」
「岸井さんのこと、好きだったから?」

