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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章  タモツ 


 彼女の言う「冷静」という意味が、よく理解できる。この心地よさを、美里さんから溢れ出す魅力を、手放したくはないという気持ちがぐいぐいと頭をもたげてくる。

 だけど、僕の気持ちは、もう――。

「慌てて部屋まで来たってことは、均の方は気持ちが決まったってこと?」

「え?」

 いきなり核心を突かれ、表情が固まる。どう話を切り出すのか、まるで考えがまとまらない。でも気がかりで仕方がないことがあるから、それから口にした。

「あのさ、前に店で絡んできた男のとこ、憶えてる?」

 そう言ってしまってから、話す順番を間違えたのではないかと思った。

「もちろん、憶えてるけど……」

 だけど、今更変えることはできない。

「あの時、名刺みたいの渡されてなかった? あれって今、持ってないかな」

「……」

 美里さんの表情が、さっきまでと変わる。いや、僕を見る目の色が違っていた。

「持っていたとしたら、どうするつもり?」

「あ、いや……」

 やはり話す順番を間違えたと、痛感した。それを欲しがる事情を納得させるには、どこまで話せばいいのか。というか、それ以前に。

「なんか、がっかりだな」

「え?」

「その名刺がなんなのかは、しらないけど、均が慌て会いにきた理由は、少なくとも私が期待したようなことじゃなかったみたい……」

「ごめん……」

 そう言って俯いて暫く、美里さんの漏らしたため息を耳にする。

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