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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ

◆ ◆
ドアが開く。
「入って」
美里さんはそう言って、僕を部屋の中へ招き入れた。
「そこに座って。今、コーヒー淹れるね」
「うん」
勧められるままソファーに座り、コーヒーを煎れる美里さんの後姿を眺めた。
「連絡くれたら、私が出かけたのに」
「いきなりで、ごめん」
「別にいいよー。ただ、外で話した方が、冷静になれるんじゃないかと思っただけ」
「ああ、そっか……」
気の抜けた返事を返しながら、ふと部屋の中を見渡す。はじめて部屋に来た時、もつれあうように抱き合った、今座るソファー。隣の寝室には、何度か抱き合ったベッドの片隅が視界に入る。
たとえ短い間であっても、いくつかの場面がこの頭の中に刻まれていることを実感した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
コーヒーカップを僕の前に置くと、美里さんは向かいの一人がけの椅子に腰を下ろした。
稼働させたばかりのエアコンが室温を徐々に整えようとする部屋で、少し寒そうに袖の長い部屋着の腕を擦り、髪を耳にかけ、湯気の立つコーヒーを口にする。
そんな仕草を、ついじっと眺めてしまった。
「なに?」
「ううん、なんでも――アチッ!」
慌てて出されたコーヒーを口するも、その熱さに驚いた。
「ふふ、もう、なにしてるのー?」
「ハハ、ドジった」
些細なことで、自然と笑顔を作り合った。

