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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章  タモツ 


 その後は仕事に戻っても、すべてが上の空だった。

「一体どうしたんだよ? しっかりしろって」

 小銭を床にバラまいたり、商品の陳列を間違えたり、仕事でミスをする度に、先輩から叱咤を受ける。

「す、すみません……」

 だけど頭の中は、さっきの男のことで一杯になっていた。

 手首に蛇のタトゥーのある、あの男のことが……。

 僕が男から受けた嫌悪感は、あの動画と同じ。岬ちゃんの部屋で見せられた、彼女が乱暴を受けたショッキングな場面だ。

 両者の顔は映されていなかったけど、僕は男の声を聴き、そして左手首にある蛇のタトゥーを確かに目に焼きつけた。今、あの男と同じタトゥーだと確信する。

 あの男が、岬ちゃんを探している――?

 彼女の心と身体に深い傷跡を残した張本人。岬ちゃんが部屋に引きこもり他人との接触を恐れるようになったのは、あの男のせいに違いない。

 あの動画の男は、もしかしたらFP7の浜谷陸也かもしれないと考えていたけど、それは間違いだった。

 岬ちゃんは今まで、あの男から逃れるために、部屋に引きこもっているのかもしれない。もし、二人が顔を合わせることになれば、彼女の受ける恐怖は想像するに耐えない。

 男の方の目的がなにかはしらないけど、そんなことは絶対にさせてはならなかった。

「岬ちゃんの、ためにも――!」

 自分で口に出しておきながら、その言葉に驚く。たとえ僕自身が彼女から拒絶されていようとも、この件をこのままほっておくことはできないと思った。

 それが今の偽らざる気持ち――それに気づいた時。

「!」

 僕は、あの男のある言葉を、頭に思い浮かべていた。それは、この夜のことではなく、前に来店した時のもの。

「お嬢さん。もし興味があったら――」

 そうだ、あの時に――。

 僕ははやる気持ちを抑えて、バイトの残り時間がすぎるのを待った。

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