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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章  タモツ 


「晶……」

「ご、ごめん……言いすぎたかも」

 語気を強めて気持ちを吐き出すと、そんな自分を恥じたように髪を撫ぜて俯く。

「僕だって岸井さんの境遇に同情したから、晶と別れるなんて、そんなことしたくありません」

「均……」

「だけど、僕がそれでよくても、晶が後悔するなら意味がないですよね。僕とつき合っていれば、親友として彼女の支えになることだって、できなくなると思うんです。そんなことをすれば、結果的に余計に苦しめてしまうことになるから……」

 美里さんは、黙って頷いている。

「さっき、流されてきたって言ってましたけど、僕に言われて岸井さんを突き放すのも、後になって考えたら流されったって思うんじゃないですか?」

「!」

「ごめんなさい。余計に悩ませるようなこと、言ってしまって……本当は僕にも、よくわからないんです」

「ううん。均は、すごく考えてくれてる。嬉しかったよ」

 笑った後で急に、美里さんは頬杖をつくと文句を口にする。

「でもさー。せっかく晶って呼んでくれたのはいいけど、相変わらず敬語だから逆に違和感がすごいんだけど……」

「あ! すいません――いや、ごめん」

「アハハ! まあ一応、努力は認めよう」

 テーブルの上で手を重ねて、美里さんは言った。

「もう少し、ゆっくり考えよう――二人で」

「うん。そうだね」

 とりあえず結論を出さずに、この時の話し合いは終わった。

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