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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章  タモツ 


 でも、それを聞きたいという心理は、たぶん二人とも同じで。岸井さんの境遇に同情的だからこそ、悩ましくなってしまうのは無理もないのではないか。

 そして美里さんの立場を考えれば、同情という言葉だけでは済まされない想いがあるはずだ。

「岸井さんは、自分のこと卑怯だって言ってました」

「卑怯?」

「病気を盾にすれば、晶は私を突き放せないはずだ。それを、わかっているからって……」

「……」

 美里さんは明らかに、表情を曇らせている。その心持ちは判断しがたいけど、顔色を窺うことなく、自分の感じた通りに話そうと思う。

「きっと、自分自身が嫌になっているんだと思います。僕がしった風なこと言えないけど、本当はそんな真似したくないはず。なのに、あんな風に僕のところにまできて、なりふりかまわずに……変かもしれないけど、すごいなって思ったんです」

「そう」

 美里さんが素っ気なく言うと、そこで一旦会話が止まってしまう。

 僕は冷めかかったコーヒーをぐっと煽ってから、深く息をつき黙ったままの美里さんを見据えた。

「晶は……どう思うの?」

 自然に名を口にしたつもりが、やっぱり気恥ずかしく感じる。

「どう、って……うーん、難しいなぁ」

「岸井さんは、親友として晶のこと頼ってきてるわけですよね。だとしたら、一番肝心なのは晶の気持ちじゃないですか?」

「じゃあ、均の気持ちは? 希がかわいそうだから、自分は身を引いてもいいよってこと?」

「それは、違――」

「そうやって流されてきたの。高校の時から、ずっと。だから均が――そんなこと関係ない! 絶対に別れない! そう言ってくれたら、私の悩みだって吹き飛ぶかもしれないんだよ!」

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