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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章 タモツ

コーヒーを注文してそれが運ばれてくるまで、僕たちは互いに無言だった。僕と岸井さんが話したことは、間違いなく美里さんにも伝わっているのだろう。
コーヒーを待つ間、窓の外を向いたそのすました横顔が、それを物語っている。
「さて、どうしたものだろうね」
熱いコーヒーを口にすると、まだ視線を合わせずに言った。
「あの、岸井さんは?」
「まだ、寝てる。私のベッドで」
と、何気なく言った後で、美里さんは焦ったように顔色を変えた。
「ああ、違うよ! 希にベッドを貸したって意味で、一緒に寝たとか、そういうことじゃないから……」
そんな風に言われても、正直どう返したらいいのか、まるでわからない。当然だけど、元恋人の男であれば、いくら僕だってこんなに呑気にかまえていられないだろう。
でも、それって、しらずしらずの内に、差別してることになるのかもしれない。もちろん、そんな気持ちはなくて、僕が無知すぎて実感できないだけなのだけど。
僕の反応が拍子抜けだと感じたのか、美里さんはふっとため息をこぼし話を続けた。
「まあ、そんな気にならないよね。あんな話の後だと、お互いに」
「あんな話って、岸井さんの病気のことですか?」
「うん、ごめんね」
「え?」
「まさか、均のところに行って、あれを話を聞かせるなんてさ。ホント、無茶苦茶だよね」
やはり、僕と話したことは伝わってるようだ。
「均は、どう思った?」
まったく同時に、同じ質問をしようと思いながら「美里さんは、――」と呼称するのを躊躇した分、ワンテンポ先を越されてしまった。

