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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第7章  タモツ 


    ◆    ◆


 その夜も、深夜のコンビニは静かだった。先輩は説明するまでもなく、僕一人に店をまかせバックルームでサボっている。

「ふわぁ……」

 案の定、昼間にほとんど睡眠を取れなかった僕は、欠伸をしながらレジの中で雑務をこなす。時刻は午前二時半を回るころだ。

 静寂を破るように鳴り響いた入店音に、僕は咄嗟に「いらしゃいませ」と挨拶を口にすることができなかった。どうしてもこの時刻になるとそわそわとしてしまうのは、やはり心のどこかで待っているからなのか。

「――!」

 振り返った入口付近に立っていたのは、頭に思い描いたどてら姿ではない。しかし、ある意味で同じくらい心が騒いでいた。

 その人は僕としっかりと目を合わせると、にっと笑い、それからなにも言わずに店内の品物を物色しはじめている。

 確か……岸井さん?

 昨夜、美里さんと食事している時に、姿を現した美里さんの高校時代の友人――単にその一言では済ませられない彼女が、このコンビニにきた理由は?

 少なくとも、偶然とは考えられない。さっき笑った彼女の態度が、それを物語っていた。

 鼻歌でも聴こえてきそうな感じで、足取り軽く店内を回っている。そして缶酎ハイ数本とナッツの詰め合わせを手にして、岸井さんがレジにやってきた。

「どうも」

「ど、どうも……」

 相手の意図がわからずに、とりあえず同じ挨拶を返した。

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