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第7章 　タモツ　

　スキャンダルとしてはありきたりな記事だけど、やはり問題となるのは彼女が当時まだ高校生だったという点だろう。アイドルとはいっても浜谷陸也は、当時で既に三十歳の大人だ。

　ネットでは誰でも簡単に目にすることができる一連の記事は、しかし、テレビのワイドショー等では一切報じられることはなかった。

　もし報じられて世間を騒がせていたなら、いくら芸能関係に疎い僕であっても、仮にも弘前あやか本人を目の前にしながら、まるで気づかないなんてことはなかったかもしれない。

　週刊誌でスクープされたこのスキャンダルが、テレビでスルーされたのは、やはり老舗の大手事務所『Ｄ’ｓ』の影響力によるところが大きいようだ。

　これだけ誰でもネットを操る時代になっても、テレビで放映されない限りは、なにもなかったと同じにされてしまうなんて。

　一体こんなことが、この先いつまで繰り返されるのだろうか。

　だけど、都合の悪い記事を都合よく〝なにもなかった〟ことにできるのは〝権力〟という傘に入った浜谷陸也の方であって、一方で弱小プロダクションに所属していた弘前あやか側が〝なかった〟ことにされたのはタレント生命である。

　と、芸能ネタを扱ったとあるブログでは、この件を皮肉交じりに断じていた。しかし実際それを物語るように、以来、弘前あやかは表舞台から姿を消している。

「だけど……本当に酷いのは、そんなことじゃない」

　僕はこれら憶測を含む記事とは比べられない事実を、本人から聞かされ、そして目撃している。

　例の動画の中で、彼女を犯している男が、浜谷陸也なのだろうか――？