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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第6章  美里晶 


「やっぱり、二人の間には、なにかあったと思うけど。今は、どう思ってる?」

 私が向けたきつめの視線に怯みながらも、均は慎重に言葉を連ねる。

「確かに、心配はしてます。すべてを聞いたわけではないけど、どうも過去に酷い目にあったみたいで、それで今は人目を避けるように外出する時は、あんな格好をしていて――」

 そうやって話し続ける横顔を眺めながら、次にどうリアクションするのか、まるで他人事みたいに自分のことを客観視していた。

 たぶん、それまでの私なら「ふーん、なんか大変そうだね」と大人の顔をして、話を最後まで聞き届けたかもしれない。

 でも、今のこの感情は、それまでのどのケースにも当てはまらなかった。

「あのさぁ、均」

「はい……?」

 急に話を遮られ、驚く均に。

「私のことだけ、心配してよ」

 顔を見ずに、ぼそりと言った。それを均が、どう受け止めたかわからない。

 やっぱり飲むんじゃなかった。言った瞬間から、既にそんな後悔が募りはじめていた。

 そんな風に、お互いに気まずさを覚え沈黙を続けていた時。

「いらしゃいませ!」

 と、店内に威勢のいい声が木霊してから、少し間を開け。

「?」

 背後に人の気配を感じた私は、後ろを振り返ってぎょっと息を呑んだ。

「久しぶりだね。晶」

「のぞみ……?」

 胸の奥に、どんよりとした感覚が広がっていった。

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