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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第6章 美里晶

私と均の二人の前に突如姿を現したのは、女子校時代に浅からぬ関係であった岸井希だ。
「ホント、偶然! 元気にしてたぁ?」
その挨拶は、希らしくなかった。
その辺のどこにでもいそうな二十歳前後の女子たちと同じく、テンションを上げて一頻りの文言を押しつけた後で、今度はなれなれしく「あ、ここいい?」と、均の肩に手を置き、隣の席に座る許しを得ようとしてる。
「ええ……どうぞ。美里さんのお知り合いですか? よろしければ、こちらの席でも」
均は私の方をちらりと見やりながら、そう言って自分の席を譲ろうとしている。
「ありがと。でも、こっちでいいよ。高校の同級生なんだけど、卒業以来でさぁ。邪魔しちゃって、ごめんね」
と、希は大げさに手を合わせ、可愛らしく謝ってみせる。そんな姿も、まるでらしくないのだ。
狭いカウンターの席で、私と希の間に挟まれた格好になった均は、息苦しそうに愛想笑いを返している。
最初は希と顔を合わせたことに唖然としていた私であったが、席に着くまでの一連の様子を眺めている内に、懐疑的な想いがふつふつと湧き上がってくるのを止められなかった。
そもそも、偶然のわけがないじゃない。メッセージすら数年ぶりだというのに、それから数時間後に目の前に顔を出されて「うん。久しぶりー」などど返せるはずがなかった。
「さあ、とりあえず乾杯しよー」
注文したハイボールを片手に、満面の笑みを浮かべる、希。
なんの、つもり……?
私はその顔を、苦々しく眺める他はなかった。

