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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第6章  美里晶 


【あ、そう】


 素っ気ない一言が、逆にエモーショナルな匂いを醸し出すかのよう。それに嫌な感じを受けるのは、こちらが神経質になりすぎなのだろうか。

 けれど私なりに一旦区切りをつけたタイミングであるからこそ、つい余計な危惧を覚えてしまう。

「美里さん……?」

 名を呼ばれて、ぎくりとした。

「た……均」

「どうしたんですか? そんなに、びっくりして」

「ああ、ううん。別に……ちょっと考え事をしてたっていうか」

「考え事?」

「そ、そうよ! 均が待たせるから、余計なことに頭を使ったんじゃない!」

「そ、それは、すいません」

 素直に謝る均の顔を見て、私はぷっと思わず吹き出してしまう。

「もう、いいから。とりあえず、映画でも行こう」

 おかげで気分も晴れて、均とのデートを楽しむことができそうだ。

 映画観賞の後、暗くなった街中を肩を並べて歩いた。

「期待してなかったけど、なんか割と楽しめちゃった」

「そうですね。ラストいい意味で裏切られたというか。かなり感動しました」

 そう言った均の顔を、やや冷めた目で見つめる。

「な、なんですか。その目?」

「だってさぁ。均、途中で寝てたよねー」

「ね、寝てませんて! ギリギリ耐えてましたし」

「私がその度に、肘でつついてあげたからじゃん」

「まあ、そうですけど……」

 そう言ってしゅんとした均を、私は人目も憚らずに抱きしめた。

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