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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第6章  美里晶 


 もちろん環境が変わるのを機に、もう一度リセットしたいという気持ちがあったのだし、同じ大学の男たちから口説かれた時など、変えられるチャンスはあった。

 しかし自分で言うのも口幅ったいが、なまじ美人という扱いを受けるほど、恋多き女というイメージを抱かれてしまう。アプローチしてくるのは自信に満ちた、いかにも遊び人タイプの男たちだった。

 こちらにしてみれば、はじめての異性との恋愛に際し、慎重に構えるのも無理からぬところ。先行したイメージと自分の内面とのギャップに、やがて私は苦しむようになった。

 こと異性との恋愛にあっては、きらきらとした少女マンガの世界で止まったままなのだ。

 結局は、また言い寄ってきた女の子と、つき合ったり。また流されてるだけじゃないのか。それが本当に自分らしい恋愛なのか。自問するうちに、どんどん自分自身を見失ってゆくようだった。

 そんな時に、ふと出会ったのがコンビニで働く山本均くん。

「ど、どうも……」

「あまり見かけないけど、ウチの大学?」

「他の仕事もあるんで、僕はこれで――」

「ごめんなさい。悪気はなかったの」

「……?」

「一目で君のこと、気にいっちゃったみたい」

 コンビニではじめて均を前にした、あの時。こんなタイプの男の子もいるのだと、私は内心で衝撃を受けた。

 それを特別といえるほどの、大した出会いではなかっただろう。彼に似た男の子なんて、もしかしたら沢山いるのかもしれない。それでも私は、逃れるような横顔になにかを感じていた。

 彼となら、はじめての異性との恋愛を、一歩ずつはじめられるのではないか。そう感じて、この夜に至っている。

 今、後悔は微塵もなかった。

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