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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章 均

「ごめんね。わたしばかり飲んで」
「気にしないでください。前にも言ったように、まだ未成年なので……」
「十九歳だったよね」
「ええ」
「そっか。でも、いつか一緒に飲めたらいいのになぁ。誕生日はいつなの?」
「七月です。でも――」
「でも?」
「大人になっても、たぶん飲めないんじゃないかと。父も母も全然みたいだから、遺伝的にも」
「飲む前から決めつけないの。お酒って楽しいんだよ。だから、わたしは二十歳になった山本くんと一緒にお酒が飲みたいと思うの。ね、いいよね?」
まだ、そんなには酔っていないのだろう。でも確実にテンションを上げながら、美里さんは頻りと会話を盛り上げてくれている。
それなのに、僕はといったら。
「僕と飲んで、楽しいのかな」
どこまでも卑屈に、そんなことを言った。なにも今に限らず、このレストランにきてから、ずっとこんな感じ。緊張したこと差し引いたとしても、美味しい料理と美里さんのような美女を前にして、あんまりな対応だ。
岬ちゃんのことは片隅にあったけど、なにもそればかりではなくて。美里さんのような美人の大学生が、どうして? と、お決まりの疑問が拭い去れずにいた。
そんな気持ちのまま、更にこんな風に続けている。
「今だって、楽しくありませんよね?」
言ってしまってから自分でも呆れるくらい、卑屈だと思った。

