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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章 均

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美里さんが予約してくれたイタリアンのレストランは、落ち着いた雰囲気の店で、ピザやパスタ以外にも多彩なメニューがあって、そのどれもが美味しかった。
普段は外食といったら、せいぜいファミレスであったりファーストフードであったり。そんな僕からしてみたら、料理の味もさることながら、その値段の方も気になってしまう。
店を決めたのも誘ってきたのも美里さんの方だけど、年上とはいえ女性で学生さんである。こんな場合、果たして食事の支払いは、どんな感じにするのだろう。
一応は、お金もそれなりに持ってきたけど、男だからといってはりきって全部出そうというのも、現在の世間一般の感覚とは、ずれている気もするけど……。
普通の男女交際の経験がないことで、余計なことに意識が削がれて、食事を楽しむゆとりがない。そんな僕のことを、美里さんも気にしたのだろうか。
「もしかして、こういうお店は苦手?」
「いえっ……とても美味しいです。ただ、単に慣れてないというか」
「そんなに緊張しないでいいのに。もっと食べれるでしょ。ピザ追加するね」
「は、はい」
美里さんはすぐにホールスタッフを呼び、適当なピザと自分のカクテルをオーダーする。アルコールは既に三杯目で、綺麗なメイクの施された顔色は変わらないけど、その眼差しはどことなく艶やかな色を帯びはじめていた。
そんな瞳で、僕は真っすぐに見つめられる。

