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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第5章   均  


 バイトが終わってコンビニを出ると、いつものように早朝の街に混ざる。

 通りを駅に向かって行くと、同じ方向に白い息を吐きながら歩くサラリーマンたちがちらほら現れ、駅に近づくほどその数を増す。

 都心からはかなり離れているけど、この辺りもベッドタウンなのだ。たぶん皆、これから電車での長い通勤を経て、日が射す時間帯に労働に勤しもうとしている。

 これから家に帰って眠ろうとする僕だけが、仲間外れ。常にそのような疎外感は持っていたけど、今日は特別に酷かった。

 美里さんとのことをポジティブに考えようとするほど、岬ちゃんの過去の出来事や彼女から言われたことが頭の中をぐるぐると回った。

「必要、ありません」

 あの時の言葉を思い出しただけで、胸がずきりと痛む。なのに、よせばいいのにセットで思い出してしまうのだ。

「エッチなことができるから、わたしのこと都合がよかったのではありませんか?」

 彼女から突きつけられた言葉にいくつもの言い訳をあてがうけど、そのどれもが十分ではなく、言葉にするまでもなく片っ端から粉々になった。

 メッセージの誤解を最初に解かなかったことを、今になって死ぬほど後悔している。そうできなかったのは、目の前の欲望に屈したからであることは間違いはない。

 だから、そんな僕が岬ちゃんに嫌われてしまったのも仕方のないことと、あきめるしかなかった。

 それでも不自由に生きる彼女の助けになりたいと思った、その気持ちにだけは嘘はなかったと、今でも信じているけど……。

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