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キズ×ナデ【Hな傷跡と仮初の愛撫】
第4章   岬? 


    ◇    ◇


 ゴッ――。

 はじめに衝撃があり、画面が大きく揺れる。

 それは強く押し倒された時に、スマホが手から滑り落ちたから。動画に撮ることを告げれば、相手を怯ませられると考えたのだけど。

 結果的には、その矢先に男の力でねじ伏せられてしまう。

 暫く乱れてはっきりしない画像と、ガサゴソという騒がしいノイズが続いた。

 そして、やがて――。

『いやっ……』

 口を塞ごうとする手からなんとか逃れ、絞り出した最初の声がそれだ。

 次いで――。

『抵抗しなさんな。こっちとしてはご丁寧に、金の稼ぎ方を教えてやろうって――いってるんだけどなぁ!』

 ぱん!

『きゃっ……!』

 頬を強く打たれた音と、その刹那に漏れた悲鳴だ。

『そうそう。大人しくしてくれよ。元はいえば、キミの落ち度からはじまったことなんだから』

 まるで子供を諭すような口調で、男は言う。

 同時に映像の方にも変化が表れてくる。

 画面半分程度を斜めに覆う黒い物体。その端から頻りと見え隠れしている細い腕と、それを押さえつけようとする日焼けした、筋骨のたくましい腕がもつれている。

 もみ合った後に、細い腕は手首を強く掴まれ、組み伏せられた。

 黒い物体は事務所にあった、来客用のソファーである。

 力では抵抗できないと悟れば、もう声を張り上げるより他はない。

 その事実を、示すように――。

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