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愛おしいキミに極甘な林檎を
第65章 番外編:Totus tuus

「そうです。……何年も前ですが、風子は泣き虫だったんですよ」
確かによく泣いていた。今となってはそれは恥ずかしい過去だ。
「泣いていない時もいつもどこか悲しい顔をしていました。そんな風子が今は人が変わったようにたくさん笑顔を見せてくれるので俺はそれだけでも幸せなんです。
幸せなのにつらい悩みがあるっていう難しい感情は俺には分かりませんね。可愛すぎてつらいのはありますけど」
少し離れたところにあるダイニングテーブル辺りから理人さんのはぁっと呆れたような溜息が聞こえてくる。
「本人が起きている時にそれを言ってあげれば喜ぶでしょうに……。僕は相手が何を考えているのか分からない時っていうのはつらいと思いますけど」
「ははっ、風子が何を考えているかを考えるのも面白いじゃないですか」
「何ですかその楽観的な考えは……。なにがあっても風子さんを自分の元へ引き戻す自信があるからそんなことを言えるんでしょう?」

