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愛おしいキミに極甘な林檎を
第50章 pallidus memoriae*儚い恋と永久の愛

こうして隣にいるだけでも付き合っている頃に戻ったような気分になる。
でも今自分が抱いている小さくて温かい存在で現実に引き戻される。
ちょうど目が覚めて、下ろして欲しいとせがんできた。
「そろそろ仕事に戻るかな」
「子供のお昼寝の時間になるので私も帰らないと」
ベンチから立ち上がろうとした時、私の正面に来た塑羅緒さんに手を差し出された。
いつ見ても大きくて男らしい魅力がある綺麗な手。
きっとそのうち私以外の女の人の手を握っていくことになる。
だから私が触れられるのはこれで最後だ……。
少し躊躇いながらも私はその手を取って立ち上がった。
話していたのは、ほんの数十分もの間。
とても早く過ぎ去っていったように思えたけど深く記憶に刻まれていた。

