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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実

「溺恋のカラーであるのなら、もっと純色(ビビットカラー)に近い色の方が……」
「そうでしょうか。毒々しい女よりも、ちょっと影がありそうな女性の方に、欲情したくなりませんか、男性は。茶色がかったくすんだ色が出ないのであれば、淡く澄んだ色(ペールトーン)でも」

 巽は腕組をして考え込むと言った。

「一色ではおとなしすぎる。待っているだけでは男は落ちない。攻めないと」

 そういうものらしい。

「ならばラメかパールを入れるのはどうですか。光線の加減で色が変わるように。そうすればたくさんの表情が出てくると思いますが」

 わたしの提案に巽は頷いてくれた。

「それ、いいですね。ただラメ入りは成分によっては唇が荒れるので、安全圏で出来ればパールの方で」
「パール、上品でいいんじゃないでしょうか」

 巽はボールペンを取り出すと、また企画書の余白に色のことを書いた。
 わたしも打ち合わせ用に使っている、B5版の黒いビジネス手帳を取りだし、決定したことや今後の課題などを手帳に書き込んでいく。

 企画書に書かれている赤字は、昨日あれから考えたものなのだろうか。
 それを尋ねてみたくても、禁句のように昨日のことには触れられない。

「もう一色は、赤色にしませんか。それにシャンパンゴールドのようなものを入れてみれば……」
「レッドゴールドという感じですね。専務、これならちょっと明るいからトーンは抑えた方が」
「ここらへんの色がよさそうですね。あとは実際に塗った時の色合いになりますが、到達点はここくらいまでの色がいいと」
「同感です」

 専務の巽は、悔しく思うほどにいつも通りの顔で、仕事内容を語っている。

 わたしなんか、どんな顔を合わせればいいのかわからず、そして朝イチからなにをされるのだろうと、ほぼ四徹してしまったというのに、ふたりになっても巽は、爽やかで憎たらしい上司の顔をしたままだ。
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