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アムネシアは蜜愛に花開く
第4章 Ⅲ 突然の熱海と拗れる現実

「では話は以上です。藤城さんはこの後、もう少し詰めて打ち合わせをしたいので、お借りします」
「はい、どうぞ。藤城は根性はありますが、自分から意見を言うのは慣れていない環境にいたので、そこのところはよろしくご指導下さい」
さらりとフォローを入れる怜二さんはいつも通りだ。
由奈さんと浮気をしていたら、もっと罪悪感に挙動不審になってしまうだろうが、そんなことは一切ない。
やはり巽の思い違いではないだろうか。
お日様のような穏やかな横顔。
……大好きだと思っていた、怜二さんの顔。
「……それとここからはプライベートで。昨日は由奈を送ってくださり、ありがとうございました」
巽が彼氏として頭を下げる様は、わたしが見ていて嬉しい場面ではない。
なんだかんだ言って、巽は由奈さんのことを大切にしているじゃないか。
「いえいえ。専務の方はお加減は大丈夫ですか?」
「ええ。おかげさまで」
巽は意味ありげにちらりとわたしを見る。
酔っていない巽に、あんなことこんなことをされてしまったわたしは僅かに目を泳がせた。
「それでですね、お詫びを兼ねて……おふたり、熱海に泊まりに行きませんか?」
巽は突然にそんなことを提案してきた。

