この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

巽だから蕩けて感じる身体は、心よりも正直で。
もう、どうしようもなく、
「た、つみ……」
どうしようもないほどに、巽が好きだ。
彼の匂い、熱、強さ……そのすべてに、やはりわたしは、苦しいくらいに巽が恋しくてたまらないのだ。
愛されているから愛そうとしているのではない、理屈抜きに巽にだけに能動的に湧き上がる感情は、昔となにひとつ変わらない。
切なくて苦しくて胸を痛ませるのに、心を潤すこの甘美な気持ちは――。
しかし好きだと言えない唇は、ただ戦慄くだけだった。
「巽……」
十年以上経っても、まだ巽を好きだと思う心は、いずれどこかに消え去るのだろうか。
わたしの心は、あの日鳴いた蝉のように、いつか朽ちてなくなってしまうのだろうか。
わたしが巽を愛した証は、風塵に帰すのだろうか。
それはあまりに悲しくて。
わたしは、ここにいる。
わたしは、あなたを見つめている。
たとえあなたに恋人がいようとも。
あなたを好きなわたしは、ここに在る。
わたしは、あなたに――恋をしている。

