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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

「そんなのわたしがひとりで解決するから、巽はいらない!」
「そんな悲しいことを言うなよ、アズお姉ちゃん」

 巽は背広を脱ぎ捨てると、ワイシャツのボタン三つ分と、両手のカフスボタンを外しながら、ゆったりと艶然と笑って言う。

「俺達、最後までした仲よしだろう?」

 びくっとわたしの身体が揺れる。
 その怯んだ瞬間、スカートの下に手を掛けた巽の手が、ショーツごとストッキングを一気に引き下ろして、あっという間に足から引き抜いてしまった。

「ちょ、なにをするのよ!」

 わたしはスカートを両手で押さえたが、座り込んだ巽の膝の上に持ち上げられたわたしの足は、一気に大きく左右に広げられてしまう。

「やだっ、裏切りたくないって、わたし言ったでしょう!?」
「別に挿れるんじゃねぇよ」

 ふて腐れたような表情で巽は言う。

「そういう問題じゃない!」
「だから俺、アズの意志を尊重して、アズの悩みに乗ってやっているんだろうが」
「違うよ、これは! 人権無視よ! プライバシーの侵害よ!」
「お前がどうでもいい奴だったなら、今頃何度でもお前を犯してる」

 その眼差しがあまりにも切実すぎて、わたしが息を飲んだ瞬間に、広げた足を頭に付けるようにしてぐっとわたしをふたつ折りにした。

「やだ、やだったら!」

 巽が見てる。
 わたしの枯れたところを、照明の下で真上からじっくりと。

 巽が。
 わたしを息づかせる巽のあの黒い瞳が。

「見ないで……」

 あまりにも恥ずかしくて、あまりにもそこに意識が集中してしまって――、

「アズ」

 ……とろりと、蜜が溢れたのがわたしにもわかった。
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