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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

「舐めている、YES OR NO!」
「い、YES」

 思わず迫力負けしてしまい、勢いで答えてしまった。

「それでわからねぇのか? そんなにそのラブローションって言うのは優れものなわけ?」
「し、知らないよ」

 巽は手を出して偉そうに言う。

「出して」
「え?」
「あいつが騙されるほど間抜けなのか、わからないほど巧妙なものなのか。そんなもんが売っていることなんて知らなかったぞ、俺は。どこから仕入れた情報だよ、お前」
「お、同じ悩みのひとっているのかなって、ネットで探していたら、見つけたというか……」
「だからって、そんな怪しいものを買うなよ」
「だ、だって……深刻な悩みで」
「そんなの男が下手だからに決まっているんだろうが。なんだよ、女に無理させる男って。……俺が言えた義理ではねぇけどさ。ほら、出せって」

 巽に急かされたわたしは、ローチェストの引き出しの中から赤い入れ物を取り出して渡した。
 現物を見た巽は呆れ返ったような盛大なため息をついていたが、やがてそれを掌に出した。

「やっ、そんなに出さないでよ。それ高いんだから!」
「なんだよこれ。スライムか?」

 巽が指につけて糸を引くそれは、かなりいやらしい。
 そして巽はそれを口に含んで見せる。

「うわ……」
「な、なに!?」
「フルーティってありえねぇから!」
「え……。だったらどんな味なの、本当は」
「そんなの……」

 言おうとして巽は顔を赤らめて、言葉を切った。

「いいんだよ、女は知らなくて」

 巽はどれほどたくさんの女と、そういう淫らなことをしてきたのだろう。
 少しだけ気分がよくない。
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