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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

「いつも、濡れなくて……付き合ってもすぐふられてたから」

 いつもそうだった。
 言い寄ってくるのは向こうなのに、濡れない体のせいですぐにふられて。

 恋人というのは、セックスをしないといけない義務感に芽生えたから、ラブローションという手を借りて、怜二さんと上手くやっている……つもりだったのに。

――デキてるよ、あいつら。お前とあいつが付き合う前から。

「怜二さんも、濡れないことに落ち込んでいて……。さすがに三度目もそんな理由で彼氏とぎくしゃくしたくないから、偽りでも濡れたようにしようと思って、そのままずるずる……」

 ため息をついて巽を見ると、彼の片眉が跳ね上がっている。

「三度目!? 高校の時以外にもいたのかよ、昔の男! 誰だよ、それ」
「え、そこ!? だ、大学の時の話よ。大学のアルバイト先の先輩で……押し切られて付き合った1週間後にふられているから、カウントしていいのか微妙だけど」

 ああ、なんでこんなこと暴露しているんだろう、わたしは。
 そして、なんで巽はこんなに不機嫌になっているのだろう。

「巽にだっていたでしょう、過去お付き合いしていた彼女は!」
「俺は……」

 言い淀んだ巽は、そのまま答えずに、違う質問に切り替えてきた。

「あいつは……広瀬は、そこを舐めないのか?」
「は?」
「クンニ」

 言わんとしているところがわかり、わたしは真っ赤になってもじもじしてしまった。
 なにが嬉しくて、初恋の元義弟にこんなことを……。
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