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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

「やっ、ちょっ、んん……っ」
ドンドンと拳で巽の胸を叩くのにびくともしない。
唇に噛みついて抵抗しようにも、巽は止まらない。
肉厚の舌がわたしの唇をこじ開けて、わたしの舌を弄るだけで身体が奮えてしまう。
荒々しいキスとは裏腹に、口腔内に入った巽の舌は優しい。
ざらついた舌の表面を優しく撫でられ、歯茎の裏側を丁寧に舐められると、それだけでぞくぞくしてしまう私は、仰け反るようにしながら巽の胸に凭れるようにして力が抜けていく。
「……可愛い」
熱を帯びたとろりとした黒い瞳でそんなことを囁かれると、下腹部の奥が収縮するように疼いて、じゅんじゅんと熱い蜜を垂らしているのがわかった。
メスとしての性(さが)やら、罪悪感で居たたまれないのに、
「アズとのキス……、すげぇ気持ちいい」
それなのに、巽の熱に浮かされたような官能的な声に魅惑され、ドキドキがとまらなくなってしまうのだ。
「……アズ、舌を出して」
十年前はあんなに冷たかったのに、どうして今はそんなに甘く囁くの?
どうせなら、わたしの理性を奪うくらいにもっと乱暴にしてくれれば、十年後は合意ではなかったと、巽を突っぱねることが出来るのに。
それでも十年後も巽に魅入られ従順となってしまうわたしは、蕩けてしまいそうな心地になりながらおずおずと舌を出すと、巽にじゅっとわたしの舌を吸われ、また貪られるようにして唇が重なった。
ああ、なんで抵抗が出来ないの。
心も気持ちよくてたまらない。こんなに満たされたキス、怜二さんともしたことがなかった。
いけないとわかっているからこそ余計に、巽のキスは甘く蕩けるようで、わたしからとうとう喘ぐような甘ったるい声が出てきてしまうと、巽は優しく目を細めた。
そして巽の両手がわたしの両手を掴んで彼の首に回させ、目を開けてとろりとした視線を絡めたまま、さらにくちゅりくちゅりと水音をたてて、ねっとりと濃厚に舌を搦め合わせる。
「ん……は、ぁ……む……ぅんっ」
優しく巽に頭を撫でられると、泣きたくなる。
巽にこんなに優しくされたことはなかったから。

