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アムネシアは蜜愛に花開く
第2章 Ⅰ 突然の再会は婚約者連れで

「どうせなら、あのお人好しの彼氏にも言ってやろうか。お前は俺のお古を抱いているん……」

 わたしがバァァンと机を手で叩くと、巽は押し黙った。
 
「それ以上無駄口を叩くなら、わたしは失礼させて頂きます!」

 憤るわたしは、すくりと立ち上がる。

 じりじり、じ……。

 意志の力で、感傷という名の蝉の音をわたしは消した。
 
「わたしに対する嫌がらせのために、ルミナスの仲間を巻き込まないで下さいませんか、氷室専務」

 わたしは極力丁寧な物言いに努めた。
 彼が過去を否定させたのだ。

 だったら、わたし達の間にあるのは、新会社の専務という立場と、旧会社の広報担当という、上司と部下の上下関係だけだ。

 年上でも、肩書きが上位の人間には謙る。
 モデルをしていたのなら、これが社会だとあなたもわかっているでしょう?

 別に再会を泣いて喜んでくれと言っているわけではない。
 今までどう生きてきたのと、聞いて欲しかったわけではない。
 抱いてしまってごめんなさいと、謝って欲しいわけでもない。

 ただ、関係したことを否定だけはして貰いたくなかった。
 あの事実で傷ついた人達がいるのだから、笑い話にして貰いたくなかった。

 そう思うわたしは、我儘なのだろうか。

「わたしのこと、嫌いなら嫌いで結構です。だけどわたしのために、わたしが大切に思う者も馬鹿にされて、彼らを窮地におとしめるくらいなら、潔くわたしが辞めます」
「……せっかくのアムネシアを、蹴るというのか」

 彼のぼやきが意味しているところが、わたしがアムネシア好きだということに由来するのなら。
 彼が昔のわたしを覚えているというのなら。

「ええ。アムネシア以上に、大好きな人達ですので」

 彼が昔のことを持ち出してわたしを脅したり揶揄する材料にするのなら、わたしは巽のいる舞台から潔く幕を引く。

 それが十年後のわたしだ。
 
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