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アムネシアは蜜愛に花開く
第2章 Ⅰ 突然の再会は婚約者連れで

「でなになに? 昨日は濡れたのかい?」
「オヤジ」
「駄目だったのか、そうかそうか。タツミィに持って行かれたか」
香代子にはすべて話している。
彼女はこう見えて、聞き上手なのだ。
自分のことは一切話さないのだけれど、気づけばわたしは洗いざらい話していた。
「そうだ、杏咲ちん。由奈嬢が結婚すると知っている?」
「あ……、怜二さんに聞いたばかり」
「広瀬氏に一歩遅れたか。だったら統合の話が今日にもっていうのは?」
「今日? そんな急いで!?」
「ああ。なんでも由奈嬢の相手が今日、それを宣言しに来るとかで」
「展開早くない!?」
「私もそう思うんだけれど。アムネシアと統合されてしまって、ルミナスの社名がなくなるのなら、ルミナスの代表作を考えてきた私の案は、どこに消えるんだろう」
香代子は項垂れた。
「私はルミナスだから企画をさせて貰えたけれど、アムネシアでもやらせてくれるとは思わないんだよね。あっちはあっちの伝統を守る企画開発がいるんだろうし」
「香代子……」
「まあ、悩んだって仕方がないんだけれどね。なるようになれ、さ!」
基本香代子は楽天的だ。
その彼女がこんなに翳った顔をしているということは、相当悩んでいるのだろう。
「それはわたしだってそうだよ、香代子。もし人員削減の危機が訪れたら、大した成果を出していないわたしなんか、真っ先に首を切られる。わたしが入りたかった、アムネシアにまた」
「それは辛いね……」
「どうにかして皆でうまくいける道が拓かれていればいいんだけれど」
そう言った時、社内放送がかかる。
『ルミナスの全社員は、大会議室にお集まり下さい』
「始めたようだね」
香代子に答えずして、わたしは下の階の大会議室に香代子と共に赴いた。

