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記憶の彼方に眠る恋
第4章 再会

拓麻の顔がそこで急に曇ったのを見て、紗友莉は発言を後悔した。
いくら「この場をしのぐため」とはいえ、記憶喪失で苦しんでいる拓麻に対して、「私のことも忘れてるんでしょ」などと言うのは、配慮が欠けているように感じたのだ。
紗友莉が即刻、弁解しようとしたが、拓麻のほうが先に口を開いた。
「だから~、紗友莉には『どこかで会った気がする』って、さっきリビングで言っただろ。それに対して、平等院さんには全く見覚えがないし、今の俺にとっては全くの赤の他人と何ら変わらない! 確かに、紗友莉の名前は、母さんから聞いたんだけど、それを言い出すと、今の俺は自分の名前すら、両親や医者から聞いて初めて知ったのと同じようなものなんだぞ」
後半、少しおどけたような、まるで事態を面白がっているような、そんな口調で言う拓麻。
その様子を見て、紗友莉はとても懐かしく思えた。
幼少期から高校時代まで共に過ごしていた頃、紗友莉と一緒にいるときにはよく、こういう「少し陽気な一面」も見せてくれていたのだ。
ただ、付き合いの長さから、今回は特に、その明るさの裏に、実は深い悲しみと苦悩を隠していることがひしひしと伝わってきて、紗友莉は思わず自分のほうからも拓麻の身体を抱きしめたくなった。
そうする寸前で、理性のブレーキをかけることに成功したが。
いくら「この場をしのぐため」とはいえ、記憶喪失で苦しんでいる拓麻に対して、「私のことも忘れてるんでしょ」などと言うのは、配慮が欠けているように感じたのだ。
紗友莉が即刻、弁解しようとしたが、拓麻のほうが先に口を開いた。
「だから~、紗友莉には『どこかで会った気がする』って、さっきリビングで言っただろ。それに対して、平等院さんには全く見覚えがないし、今の俺にとっては全くの赤の他人と何ら変わらない! 確かに、紗友莉の名前は、母さんから聞いたんだけど、それを言い出すと、今の俺は自分の名前すら、両親や医者から聞いて初めて知ったのと同じようなものなんだぞ」
後半、少しおどけたような、まるで事態を面白がっているような、そんな口調で言う拓麻。
その様子を見て、紗友莉はとても懐かしく思えた。
幼少期から高校時代まで共に過ごしていた頃、紗友莉と一緒にいるときにはよく、こういう「少し陽気な一面」も見せてくれていたのだ。
ただ、付き合いの長さから、今回は特に、その明るさの裏に、実は深い悲しみと苦悩を隠していることがひしひしと伝わってきて、紗友莉は思わず自分のほうからも拓麻の身体を抱きしめたくなった。
そうする寸前で、理性のブレーキをかけることに成功したが。

