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隷吏たちのるつぼ
第5章  第四章 口開く陥穽
 その日も会館で征四郎に陵辱され、罰として与えられた毒汁の名残が、まだ脚の間からショーツへ垂れてきているのを隠し、嘘の相談をしていたというのに。

 今や、同期との間についていくであろう差など、全く気にしていなかった。元気のない様子を見せれば、悠香梨ならば誘ってくるだろうと思い、そう仕向けただけだった。

 一通りのアドバイスを受けたあと、彼女の望む将来は何かと尋ねた。すると、仕事も大事だが、一番は、ずっと付き合っている彼氏と幸せな結婚をすることだ、と少し気恥ずかしそうに答えた。二人のなれそめを聞き出し、思い出話を語らせると、いつものサバけた人柄の悠香梨からは考えられないほど、彼にだけは強い思いを持っていることが伝わってきた。

 恋人のためなら、悠香梨は何でもするだろう。そう確信した。

 一緒に入庁した悠香梨は、とても自分と同じスタートラインとは思えなかった。仕事を憶えるのが早く、厄介な市民へは毅然と対応する度胸も備わっている。人とよく打ち解け、まだ知り合って一ヶ月の自分も含め、周囲に対する気遣いが行き届く。どれを取っても、二歳の差には思えない、はるかに先を行く「大人の女」に見えた。

 命令に対する恐怖によってではなく、悠香梨に対する嫉心にけしかけられて、彼女自身も心配しているという頼りない恋人の存在を、征四郎へ教えたのだった。

(でも、そう言っただけだもん。それ以上は、何もしてない)

 欺瞞だ。試しに頭の中で言ってみただけだ。そして思ったとおり、何の気晴らしにもならなかった。

 ずっと抱いていた理想の女性像に近しい悠香梨も、嬲られてしまえばいい。

 そんな邪心があったのだ。やっぱり自分は、人に認められる大人の女にはほど遠い、嘘まみれの女だ。また一つ、罪を重ねた。

 智咲が与したことで首尾よく悠香梨を奸詐にかけた征四郎は、どう姦したか、どんな抵抗をしたか、どんな反応を見せたのか、子供が親へ手柄話をするように喜々として話した。
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