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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第26章 運命は・・・先着順?

マリアと…二度と
面会することはおろか
連絡も交流も…一切もたない
死ぬまで…一生
その姿を見ることも
声を聞くことさえもしない
そう約束する書類が
俺とマリアの前に突きつけられた
「内容に不服がないようであれば
篠宮さん…まりあさん
それぞれ書面、捺印をお願い致します」
弁護士の一言を合図に
俺とマリア・・・双方の目の前に
ペンと真っ赤な朱肉が置かれる
口約束とは違う…公的な
相応の効力をもつ文書
こんな紙キレが
これまでの全てを…棒に振るんだ
『・・・』
俺は書類にもう一度目を通す
向かいのマリアも…同じ仕草をしていた
『あの・・・これだけですか?』
そう声をあげたのは
横目で俺の前の書類を見ていた母親…
「何か異議申し立てがございますか?」
ズレた眼鏡を直しながら
弁護士がチャキチャキと応える
『あの…いえ、そうではなくて
慰謝料ですとか…そう言ったお話は・・・』
「それは…橘さんの
〃寛大な措置〃だとお考え頂ければと思います」
『・・・』
察した母親が
反射的にマリアの旦那の方に
体を向けて…深く一礼した
寛大な措置…
確かにそうなんだ
ましてや俺は
一度その約束を破っている身だ
だけど俺は…表面上提示されている
〃寛大な措置〃を
隣に座る母親のように素直には
受け入れられていなかった
そんな訳がないことが
どことなく…わかっていたから
ガタ・・・
向かいの席から
椅子を引く音がした
『…此度の妻の愚行は
夫である私にも責任がありますので・・・』
ずっと一切の口を閉ざしていたヤツが
ついにそのベールを脱ぐかのように
語り始める
面会することはおろか
連絡も交流も…一切もたない
死ぬまで…一生
その姿を見ることも
声を聞くことさえもしない
そう約束する書類が
俺とマリアの前に突きつけられた
「内容に不服がないようであれば
篠宮さん…まりあさん
それぞれ書面、捺印をお願い致します」
弁護士の一言を合図に
俺とマリア・・・双方の目の前に
ペンと真っ赤な朱肉が置かれる
口約束とは違う…公的な
相応の効力をもつ文書
こんな紙キレが
これまでの全てを…棒に振るんだ
『・・・』
俺は書類にもう一度目を通す
向かいのマリアも…同じ仕草をしていた
『あの・・・これだけですか?』
そう声をあげたのは
横目で俺の前の書類を見ていた母親…
「何か異議申し立てがございますか?」
ズレた眼鏡を直しながら
弁護士がチャキチャキと応える
『あの…いえ、そうではなくて
慰謝料ですとか…そう言ったお話は・・・』
「それは…橘さんの
〃寛大な措置〃だとお考え頂ければと思います」
『・・・』
察した母親が
反射的にマリアの旦那の方に
体を向けて…深く一礼した
寛大な措置…
確かにそうなんだ
ましてや俺は
一度その約束を破っている身だ
だけど俺は…表面上提示されている
〃寛大な措置〃を
隣に座る母親のように素直には
受け入れられていなかった
そんな訳がないことが
どことなく…わかっていたから
ガタ・・・
向かいの席から
椅子を引く音がした
『…此度の妻の愚行は
夫である私にも責任がありますので・・・』
ずっと一切の口を閉ざしていたヤツが
ついにそのベールを脱ぐかのように
語り始める

