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第26章 運命は・・・先着順？

『母さん…今は、そんな話は良いから
少し落ち着いてくれよ』


『これが落ち着いていられますかっ！！！』





・・・。





この親子の関係が良好か否かは別として

こんな…プライドの塊みてぇな男が

こんな話し合いの場所に
最も敵さないような

扱いに困るような母親を同席させたのは
同情を請うため…もしくは、その相関図

あくまで自分が被害者だ、と
認識させて

自分に不利な事実を揉み消して
マリアが何も反論出来ないように

それこそ…外堀から埋めていく

そんな算段なんだろうな・・・









『申し訳ありません・・・』





ｶﾞﾀﾝ…









少し騒がしい向かいにいる先方に向けて
立ち上がって声をあげたのは
俺の母親・・・






『この度は…息子が
大変に申し訳の立たない事を致しまして

お詫びの言葉もございません・・・

本当に…本当に
申し訳ございませんでした』






青白い顔をして
小さく、小さくなって

そのまま床にめり込みそうな程に
頭を下げて謝罪する母親の姿に

俺は直ぐ様立ち上がって
並んで頭を下げた






『ごめんで済んだら警察いらないわよっ！
一体どんな育て方をなさったのかしら！？』




火に油でまくし立てるのは
先方の母親




『申し訳ありません・・・』




俺の母は…一切顔を上げず
うん、うん、と頷くようにして

その度に更に深く
頭を下げ続けた







「ｺﾞﾎﾝ……お二方とも…少し
お気を静めて下さい
話を進めさせていただきますので」




弁護士が変わらず冷淡に
場を仕切り始めた






「橘さんからの要求は
以下のものになります」






弁護士の秘書みたいな女が

俺とマリア・・・双方に向けて
テーブルの上に置いた書面…











誓約書・・・。








よくある…約款だとか契約書かなんかのように

甲とか乙とか書かれた文書に

俺の名前…マリアとマリアの旦那の名前が

それぞれ記載されている



いかにも頭の堅そうな人間が

いかにも堅苦しく作成したような文書で

記されている内容










〃甲(篠宮 優人)は

乙(橘 まりあ)と


生涯に渡り一切の接見をしないことを

ここに誓約致します〃