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第29章 果たされぬ・・・約束

エリカを・・・震えあがるほど

怒鳴り付けてまで

俺は何を動揺していたんだよ



そりゃ…見られたくないものだとか

やっちゃいけないことってのは

確かにあるけどさ











あの・・・手紙は




俺の心にだけ響いている

アイツの声だ





俺は、あれを

受け取った…あの日

あの時の一度しか読んでいない





言い換えれば

あれ以来…一度も読んでも

開けてすらいない手紙







俺は…その声を

手紙に書かれている言葉を覚えている



だから・・・読む必要がない

それもある




だけど…その声を

彼女の気持ちを受け取っていながら

俺は…それに反した生き方ばかりしていた




マリアは…手紙の最後の方に

読んだら…理解したら

手紙は処分してくれ、と書いていた





なのに…その心の全てのような

彼女のメッセージを聞いていながら


未だ…そんなもんを

女々しく机の引き出しにしまっている俺






アイツが知ったら

どれ程、失望するだろうな…





そんな…うしろめたさだとか

情けなさ





誰にも知られる事のない俺を

見られてしまった…

そんな思いがしたんだ





アイツの最後の言葉・・・




マリアの・・・俺へのメッセージ







そんな…大切な言葉にさえ

向き合えない俺がいることを




誰にも知られたくなかった





向き合えない…逃げてばかりの俺に


俺自身が気づきたくなかったんだ




ずっと…