この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
終止符.
第14章 想い
「奈緒さん…僕、藤田さんに会って来ました。」

奈緒を抱きしめたまま純が言った。


「純…」


「なぜ母が捨てられたのかも聞かせてもらいました。」


純の腕に力がこもる。


「僕のせいなんだ。」

「違う!」

「母と僕のせいで藤田さんの奥様が死んでしまった。」

「あなたのせいなんかじゃないわ…分かっているでしょう?」


純は肩を震わせて首を横に振った。

「なにもしていなくても…僕の…僕の存在自体が間違いの結果なんだ…それが、不幸の始まり…ハハッ…」

奈緒は純の胸を両手で押して顔を見上げた。


「愛されていたのよ…だって…あなたの名前を付けたのは…」


「藤田さんですね。」


純が奈緒を見つめた。


「彼は…母を愛していたと言ってた、だから…僕の事もそうだと…産まれてから一度だけ…抱いた事があるって…」

「………」

純は悲しそうに笑い、嬉しそうに泣いていた。

「僕の誕生日を知っていました。」

「純、あなたは憎くはないの? あなたとお母さんを置き去りにしたあの人を… 」

「そうだ、始めは、文句の一つでも言ってやろうと思って聞いてたんだ…それには、全部聞いてからだと思って…」

「ッ……」

純は奈緒を抱き寄せた。

「憎めたら楽だった…あんなに痩せて、小さくなったあの人が、許してくれって言うんです…両手を床に着いて、純、すまなかった、って…ウウッ…」


社長…


「純、…」

「僕は、僕は…、まだ13才だった少女の、…愛子さんの大切な母親を奪ったんだ…」


純は声を上げて泣きじゃくった。

純の涙が、濡れた奈緒のシャツの肩に熱く滲みて奈緒を泣かせた。

辛いむせび泣きが純の背中を震わせる。


全ての罪を背負ったように泣く純の慟哭を、奈緒は自分の事のように受け止めた。


深く根を張るように広がってゆく不幸が、罪のない者を傷付ける。

昔の罪に今傷付き、明日へ踏み出せないなんて……



「純…愛子さんには会えたの?」


「会えないよ、僕になんか会わない方がいいんだ。」


「そんな風に言わないで。私、側にいるわ、ずっとそばにいる。」


「奈緒さんは、全部知っていたんですね。」

純の濡れた瞳に、奈緒は小さく頷いた。

「あなたが、傷付くのが怖かった…。」



「僕は、奈緒さんの事もいつか、傷付けるのかな…」


/198ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ