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終止符.
第14章 想い

「奈緒さん…僕、藤田さんに会って来ました。」
奈緒を抱きしめたまま純が言った。
「純…」
「なぜ母が捨てられたのかも聞かせてもらいました。」
純の腕に力がこもる。
「僕のせいなんだ。」
「違う!」
「母と僕のせいで藤田さんの奥様が死んでしまった。」
「あなたのせいなんかじゃないわ…分かっているでしょう?」
純は肩を震わせて首を横に振った。
「なにもしていなくても…僕の…僕の存在自体が間違いの結果なんだ…それが、不幸の始まり…ハハッ…」
奈緒は純の胸を両手で押して顔を見上げた。
「愛されていたのよ…だって…あなたの名前を付けたのは…」
「藤田さんですね。」
純が奈緒を見つめた。
「彼は…母を愛していたと言ってた、だから…僕の事もそうだと…産まれてから一度だけ…抱いた事があるって…」
「………」
純は悲しそうに笑い、嬉しそうに泣いていた。
「僕の誕生日を知っていました。」
「純、あなたは憎くはないの? あなたとお母さんを置き去りにしたあの人を… 」
「そうだ、始めは、文句の一つでも言ってやろうと思って聞いてたんだ…それには、全部聞いてからだと思って…」
「ッ……」
純は奈緒を抱き寄せた。
「憎めたら楽だった…あんなに痩せて、小さくなったあの人が、許してくれって言うんです…両手を床に着いて、純、すまなかった、って…ウウッ…」
社長…
「純、…」
「僕は、僕は…、まだ13才だった少女の、…愛子さんの大切な母親を奪ったんだ…」
純は声を上げて泣きじゃくった。
純の涙が、濡れた奈緒のシャツの肩に熱く滲みて奈緒を泣かせた。
辛いむせび泣きが純の背中を震わせる。
全ての罪を背負ったように泣く純の慟哭を、奈緒は自分の事のように受け止めた。
深く根を張るように広がってゆく不幸が、罪のない者を傷付ける。
昔の罪に今傷付き、明日へ踏み出せないなんて……
「純…愛子さんには会えたの?」
「会えないよ、僕になんか会わない方がいいんだ。」
「そんな風に言わないで。私、側にいるわ、ずっとそばにいる。」
「奈緒さんは、全部知っていたんですね。」
純の濡れた瞳に、奈緒は小さく頷いた。
「あなたが、傷付くのが怖かった…。」
「僕は、奈緒さんの事もいつか、傷付けるのかな…」
奈緒を抱きしめたまま純が言った。
「純…」
「なぜ母が捨てられたのかも聞かせてもらいました。」
純の腕に力がこもる。
「僕のせいなんだ。」
「違う!」
「母と僕のせいで藤田さんの奥様が死んでしまった。」
「あなたのせいなんかじゃないわ…分かっているでしょう?」
純は肩を震わせて首を横に振った。
「なにもしていなくても…僕の…僕の存在自体が間違いの結果なんだ…それが、不幸の始まり…ハハッ…」
奈緒は純の胸を両手で押して顔を見上げた。
「愛されていたのよ…だって…あなたの名前を付けたのは…」
「藤田さんですね。」
純が奈緒を見つめた。
「彼は…母を愛していたと言ってた、だから…僕の事もそうだと…産まれてから一度だけ…抱いた事があるって…」
「………」
純は悲しそうに笑い、嬉しそうに泣いていた。
「僕の誕生日を知っていました。」
「純、あなたは憎くはないの? あなたとお母さんを置き去りにしたあの人を… 」
「そうだ、始めは、文句の一つでも言ってやろうと思って聞いてたんだ…それには、全部聞いてからだと思って…」
「ッ……」
純は奈緒を抱き寄せた。
「憎めたら楽だった…あんなに痩せて、小さくなったあの人が、許してくれって言うんです…両手を床に着いて、純、すまなかった、って…ウウッ…」
社長…
「純、…」
「僕は、僕は…、まだ13才だった少女の、…愛子さんの大切な母親を奪ったんだ…」
純は声を上げて泣きじゃくった。
純の涙が、濡れた奈緒のシャツの肩に熱く滲みて奈緒を泣かせた。
辛いむせび泣きが純の背中を震わせる。
全ての罪を背負ったように泣く純の慟哭を、奈緒は自分の事のように受け止めた。
深く根を張るように広がってゆく不幸が、罪のない者を傷付ける。
昔の罪に今傷付き、明日へ踏み出せないなんて……
「純…愛子さんには会えたの?」
「会えないよ、僕になんか会わない方がいいんだ。」
「そんな風に言わないで。私、側にいるわ、ずっとそばにいる。」
「奈緒さんは、全部知っていたんですね。」
純の濡れた瞳に、奈緒は小さく頷いた。
「あなたが、傷付くのが怖かった…。」
「僕は、奈緒さんの事もいつか、傷付けるのかな…」

