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終止符.
第14章 想い
雨の中を奈緒は走った。

長袖のTシャツとフレアスカートが雨に濡れて身体にまとわりつく。

髪はポタポタと雫を落とし、奈緒の顔や首筋に張り付いていた。

サンダルが何度も足から外れ、その度に履き直しては躓(つまず)きながら坂道を走った。



純…

お願い

私の所に来て



公園を横目で見ながら、歩道の水溜まりでバシャバシャと水を跳ね上げ足早に歩く。

純に似た人を見つけると近寄り、人違いだとわかると先を急いだ。

コンビニに入り、トイレの中まで確かめてから外に出ると、駅から吐き出されてくる人の群れの中に純を捜した。

びしょ濡れのみすぼらしい姿で人を捜す奈緒を、傘をさして歩く人達が怪訝(けげん)な顔で見ては通り過ぎて行く。


純…

どこなの?


雨は新緑の色を隠し、駅前を歩く人々の足を速めた。


スカートの裾を集めて両手で絞り、奈緒はもう一度コンビニに入る。
店員の迷惑そうな視線を感じながら、純の姿を捜した。


どこかですれ違ったのかもしれない。

コンビニにいる間に通り過ぎたのかもしれない。

奈緒は来た道を引き返した。

化粧もせず、傘も財布も携帯も持たずに飛び出して来た。

雨に打たれ、濡れ鼠になっても気にならなかった。

純の事しか考えてなかった。

公園の水溜まりを踏みつけながら、奈緒は中に入って行く。

泥を跳ね、スカートの裾に茶色い粒が増えてゆく。

奈緒は祈るような気持ちで東家に目を向けた。


「……純…」


東家のベンチでうなだれている人影が見える。

横向きの姿だったが、絶対に純だと奈緒は確信した。


よかった。


奈緒は駆け寄りたい衝動をグッと堪えた。

何を言えばいいのか分からない。



純は一張羅のスーツを着ていた。


きちんと身なりを整えて行ったんだね…


奈緒は切なくなった。


雨の音で奈緒の気配に気付かない。

純の髪はずぶ濡れで頬にかかり、俯いた視線の先には、強く握りしめられた両手があった。

膝の上で固く握られた拳を睨み付けながら、純は肩を震わせていた。


声を掛けたら、崩れ落ちてしまいそうだ。


奈緒はそっと近付いた。

「…奈緒さん…」


純が情けない顔を上げて 呟くように言った。


「純…」



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