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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る
林の道を奥に分け入る。
ここから先は、十市の庭のようなものだ。
小さな頃から十市に連れられ、様々なところを歩き、遊んでもらったので、紳一郎にとっても全て馴染み深い場所だ。
だから紳一郎は十市の行動もなんとなく読める。
…こんな暑い日は…
もしかしたら、翡翠池にいるかも…。

紳一郎は口元に笑みを浮かべ、ほど近い翡翠池に向かった。


…翡翠池は文字通り翡翠色に輝く小さな池だ。
林の外れ…小さな滝の真下にある天然の池である。
冬は凍ってしまうが、夏は澄んだ美しい水面を称える静かな池だ。
ここは鷹司家の領地であるから、部外者は立ち寄らない。
…つまりは森番の十市と紳一郎しか行かない場所なのだ。


…水音が聞こえる。
…十市が泳いでいるのかも知れない。

紳一郎は弾む気持ちのまま、そっと足音を忍ばせて池に近づく。
…突然行って驚かせよう。
十市、どんな貌をするかな…。

紳一郎はわくわくしながら、白樺の木に隠れながら池を覗いた。

…いた!十市だ…!

十市は悠然と抜手を切って池の中を泳いでいた。
…まるで解き放たれた美しい人魚のようだ。
悠々と泳ぐと、池の淵からざばりと音を立てて上がった。

紳一郎ははっと息を呑んだ。
…十市は一糸纏わぬ裸であった。

紳一郎は瞬きもせずに十市の裸体に釘付けになる。
木洩れ陽の輝く濃い陽光の下、十市の裸体はまるで雄々しく美しいギリシア神話の美神のようだった。
…褐色の輝くような肌、広い肩、分厚い胸板、美しい筋肉に覆われた引き締まった腹部…。
そして…夏草が生い繁る如く濃い褐色に覆われた茂み…。
…その下には目を奪うばかりの長大で雄々しい美しい刀のような性器が下がっていた。

紳一郎は、はっきりと十市の裸体を見たのは初めてだった。
上半身の裸はよく見ていた。
その逞しく美しい身体はいつも紳一郎をうっとりとさせた。

…しかし、全裸姿を直視したのは初めての経験だった。
…紳一郎は十市の雄々しくも生々しい牡から目が離せなくなっていた。
胸の鼓動は苦しいくらいに高鳴り…そればかりではなく身体中の血液が下腹部に集まるような今まで感じたことがないような物狂おしい昂りを感じていたのだ。
余りの衝撃に紳一郎は思わずその場にしゃがみ込んだ。
「…あ…っ…」

がさがさと枝葉が鳴り、その音に身体を拭いていた十市が振り返る。











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