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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第5章 緑に睡る

「誰だ?」
鋭い声が飛び、がさがさと草を掻き分け、こちらに向かってくる音がする。
…十市がこっちに来る…でも…どうしよう…。
紳一郎は狼狽していた。
彼の性器は、今まで体験したことがないほど硬く兆していたからだ。
…今、来られたら…十市に気づかれる…。
焦っている紳一郎の頭上から、十市の声が響いた。
「坊ちゃん…!」
恐る恐る貌を上げる。
太陽を背にした精悍な男らしい貌が、輝くように笑っている。
いつもは黒い瞳が陽の光を受けて、濃いアメジスト色に煌めいていた。
ブロンズ色に濡れた身体…逞しい腰にはタオルが巻き付けられていて、紳一郎はほっとした。
「もう来ていたんですか。明日かと思っていました」
「…う、うん。…待ちきれなくて…一日早く来た…」
弱々しく答える紳一郎に怪訝そうに眉を顰める。
「どうしたんですか?具合でも悪いんですか?」
「…ちょっと…立ち眩みを起こしただけ。…汽車で酔ったのかも…」
取って付けたような言い訳も、素直な十市はすぐに信じる。
「それはいけない。立てますか?」
「だ、大丈夫。もう平気…」
下腹部の昂まりはだいぶ収まっていて、紳一郎はひとまず安心する。
「服を着てきます。待っていてください」
「…うん」
十市が足早に服が置かれている岩場に戻る。
おずおずと十市の姿を目で追う。
紳一郎に背を向けた形…十市の引き締まった形の良い褐色の尻が見える。
また下肢が熱くなりそうで、慌てて目を逸らす。
…僕は…どうしたんだ…。
混乱する頭で考える。
「…坊ちゃん。行きましょう」
服を着た十市が傍らに戻ってきた。
「…うん…」
差し出された手をぎゅっと握りしめる。
大きな温かい手…。
紳一郎はその温もりを感じながら、訳も分からずに泣きたくなった。
俯いて十市には気づかれないようにする。
…僕は…どうしてしまったんだ…。
十市は紳一郎はまだ本調子ではないと思ったのだろう。
紳一郎を不審がることもなく、飾らない口調で呟いた。
「坊ちゃんに会えて嬉しいです」
「…僕もだ…」
涙声にならないよう短く答える。
…僕は…もしかして…
十市の手をもっと強く握りしめる。
…もしかして…十市のことを…。
鋭い声が飛び、がさがさと草を掻き分け、こちらに向かってくる音がする。
…十市がこっちに来る…でも…どうしよう…。
紳一郎は狼狽していた。
彼の性器は、今まで体験したことがないほど硬く兆していたからだ。
…今、来られたら…十市に気づかれる…。
焦っている紳一郎の頭上から、十市の声が響いた。
「坊ちゃん…!」
恐る恐る貌を上げる。
太陽を背にした精悍な男らしい貌が、輝くように笑っている。
いつもは黒い瞳が陽の光を受けて、濃いアメジスト色に煌めいていた。
ブロンズ色に濡れた身体…逞しい腰にはタオルが巻き付けられていて、紳一郎はほっとした。
「もう来ていたんですか。明日かと思っていました」
「…う、うん。…待ちきれなくて…一日早く来た…」
弱々しく答える紳一郎に怪訝そうに眉を顰める。
「どうしたんですか?具合でも悪いんですか?」
「…ちょっと…立ち眩みを起こしただけ。…汽車で酔ったのかも…」
取って付けたような言い訳も、素直な十市はすぐに信じる。
「それはいけない。立てますか?」
「だ、大丈夫。もう平気…」
下腹部の昂まりはだいぶ収まっていて、紳一郎はひとまず安心する。
「服を着てきます。待っていてください」
「…うん」
十市が足早に服が置かれている岩場に戻る。
おずおずと十市の姿を目で追う。
紳一郎に背を向けた形…十市の引き締まった形の良い褐色の尻が見える。
また下肢が熱くなりそうで、慌てて目を逸らす。
…僕は…どうしたんだ…。
混乱する頭で考える。
「…坊ちゃん。行きましょう」
服を着た十市が傍らに戻ってきた。
「…うん…」
差し出された手をぎゅっと握りしめる。
大きな温かい手…。
紳一郎はその温もりを感じながら、訳も分からずに泣きたくなった。
俯いて十市には気づかれないようにする。
…僕は…どうしてしまったんだ…。
十市は紳一郎はまだ本調子ではないと思ったのだろう。
紳一郎を不審がることもなく、飾らない口調で呟いた。
「坊ちゃんに会えて嬉しいです」
「…僕もだ…」
涙声にならないよう短く答える。
…僕は…もしかして…
十市の手をもっと強く握りしめる。
…もしかして…十市のことを…。

